一人美容室の開業資金は、物件の条件と坪数で大きく変わりますが、総額1,000万円~1,500万円前後を一つの目安に考えてください。内装工事だけで済む話ではなく、物件取得費、美容機器、そして開業後の運転資金まで含めた金額です。
この記事では、東海エリアを中心に創業31年・約900件の美容室の設計施工を手がけてきた有限会社キックが、一人サロン・小規模サロンに絞って、必要な資金の内訳と自己資金の考え方を解説します。
▶関連記事:「美容室の内装|費用・デザイン・業者選びの基本をまとめて解説」

一人美容室の開業資金の考え方
結論:一人サロンでも「内装費+運転資金」で考える
一人美容室だから安く済む、とは限りません。 席数が少なくても、シャンプー台の給排水、電気容量、換気といった設備工事は必要です。設備工事は席数に比例して安くなる部分ばかりではありません。
開業資金は物件取得費・内装工事費・美容機器や什器・運転資金の4つに分かれます(内訳の詳細は別記事にまとめています)。一人サロンで特に注意したいのは、運転資金を削らないことです。
▶詳しくはこちら:「美容室開業の費用はいくら?内訳と資金調達の考え方」
一人美容室は何坪・何席が目安?
10坪前後から成立します。当社では1席のみのプライベートサロンの施工実績もあります。
一人サロンでよくある構成は、セット面1〜2面、シャンプー台1台、待合スペース、バックルーム。これを10坪前後に収めるケースが多くなっています。当社の施工で最も多い坪数帯は15〜25坪ですが、一人サロンでは10坪前後が中心です。
面積が小さいほど設計が簡単になる、というわけではありません。むしろ限られた面積で動線・収納・設備を成立させる難易度は上がります。セット面とシャンプー台の距離、薬剤の保管場所、洗濯機や乾燥機の置き場。小規模だからこそ、設計の精度が毎日の使い勝手を左右します。
内装工事費はいくらかかる?
当社の目安は坪単価60万円(税別)〜です。10坪なら内装工事だけで600万円前後が計算上の出発点になります。
ただしこの数字は、物件の条件で上下します。上振れしやすいのは次のようなケースです。
- スケルトン物件で、給排水を新たに引き込む必要がある
- 電気容量が足りず、増設工事が必要になる
- 排気経路が確保しにくく、ダクトの経路が長くなる
- ビルの構造上、床を上げる必要がある(給排水の勾配確保)
逆に、居抜き物件で設備がそのまま使える場合は、200〜600万円程度に収まることもあります。ただし「居抜きだから安い」とは限りません。設備の劣化が進んでいて、結局やり直しになる物件もあります。契約前の現地調査が不可欠です。
内装以外に何が必要?
美容機器と運転資金です。ここを甘く見積もると開業後に苦しくなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 物件取得費 | 保証金(敷金)・礼金・仲介手数料・前家賃・空家賃 |
| 美容機器・什器 | セット面・チェア・シャンプー台・レジ・タオル類・備品 |
| 運転資金 | 家賃・材料費・広告費・生活費 |
| その他 | ロゴやショップカードなどの販促ツール・美容商材の初期仕入 |
一人サロンで見落とされがちなのが、開業前の「空家賃」です。物件を契約してから工事が終わるまで、売上はゼロですが家賃は発生します。内装工事に3週間〜1ヶ月かかり、その前の準備期間も含めると、2〜3ヶ月分の空家賃を見ておく必要があります。
なお、美容機器の選定のご相談も承っています。お選びいただくメーカーによっては、当社経由で割引が可能なケースもあります。
運転資金はどれくらい残しておくべき?
使い切らずに残す。これが一人サロンの鉄則です。
一人サロンは、自分が倒れたら売上がゼロになります。スタッフがいる店舗なら誰かがカバーできますが、一人ではそれができません。体調不良やケガで1ヶ月休んだ場合を想定して、生活費も含めた運転資金を確保しておいてください。
また、開業直後から予約が埋まるとは限りません。前職からの引き継ぎがある方でも、全員が移動してくれるわけではないのが実情です。売上が想定の半分でも数ヶ月持ちこたえられるか、という視点で資金計画を立ててください。
自己資金はいくら必要?融資は使える?
自己資金だけで開業する方は少数派です。現在は「日本政策金融公庫+民間銀行の協調融資」が主流になっています。
かつては日本政策金融公庫の創業融資だけで足りるケースもありましたが、融資額には上限があり、公庫単独では必要額に届かないことが多くなっています。実務では、公庫と民間銀行の両方から融資を受ける協調融資で開業資金をカバーするのが一般的です。
融資の可否を左右するのは、事業計画書の完成度です。そして審査の申し込みには、平面図と工事見積もりが必要になります。つまり融資を申し込む時点で、設計者に相談して図面と見積もりを作っておく必要があるということです。
キックでは、この融資用資料の準備をサポートしています。必要に応じて美容業界専門の税理士のご紹介も行っています。
一人美容室の開業で、資金面はどこでつまずきやすい?
多いのは「物件を先に決めてしまう」ことです。
物件を契約した後で設備工事の見積もりを取ると、想定を大きく超えることがあります。しかし契約済みなので引き返せません。予算をどこかで削るしかなくなり、多くの場合それが運転資金か、設備の質になります。
他によくあるのは次のパターンです。
- 融資が間に合わず、オープンが後ろ倒しになって空家賃が積み上がる
- 内装の見積もりで「設備工事は別途」に気づかず、後から追加請求が出る
- 美容機材や既製品の家具が内装見積もりに含まれていなかった
- 自己資金をすべて内装に使い、開業直後の運転資金がない
いずれも、設計者に早く相談していれば回避できたものです。
よくある質問
Q. 自己資金がほとんどなくても開業できますか?
A. 融資の審査では自己資金の額と事業計画の内容が見られます。自己資金が少ないほど審査は厳しくなるのが一般的です。ただし金額だけで決まるものでもありませんので、まずは現状をお聞かせください。当社は融資機関ではありませんが、資料準備や税理士の紹介でサポートできます。
Q. 10坪の一人サロンなら、いくらで内装できますか?
A. 坪単価60万円(税別)〜が当社の目安ですが、物件の設備状況で大きく変わります。現地調査をしないと正確な金額はお出しできません。逆に、現地を見ずに即座に総額を提示する会社にはご注意ください。
Q. 居抜き物件のほうが安く済みますか?
A. 設備がそのまま使える物件なら安く済みます。ただし給湯設備や給排水の状態によっては、結局やり直しになることもあります。契約前に設計者が現地を確認することをおすすめします。
Q. 将来スタッフを増やす予定があります。どう設計すべきですか?
A. 最初から拡張の余地を織り込んで設計します。セット面の増設余地、電気容量、水圧、バックルームの広さなど、後から変えにくい部分を優先的に押さえておきます。この点は初回のヒアリングでお聞かせください。
まとめ:資金計画は「開業後」まで含めて立てる
一人美容室の開業資金は、内装工事費だけを見ていると足りなくなりがちです。物件取得費、美容機器、そして開業後の運転資金まで含めて計画してください。特に運転資金は、使い切らずに残すことが一人サロンでは死活問題になります。
そして順番が大切です。物件を契約する前に設計者に相談してください。図面と見積もりがあれば融資の準備も進みますし、設備の想定外も防げます。
有限会社キックでは、資金計画のご相談から物件の現地調査、設計・施工、開業後のサポートまでワンストップで対応しています。一人サロンの開業をお考えの方も、お気軽にご相談ください。
この記事の監修・運営
有限会社キック(美容室・サロン専門の設計事務所)
- 一級建築士事務所:愛知県知事登録(い-7)第14546号
- 建設業許可:愛知県知事許可(般-2)第38328号(建築工事業・内装仕上工事業)
1995年(平成7年)設立。東海エリアを中心に創業31年・約900件の美容室の店舗デザイン・設計施工を手がける、美容業界特化の設計事務所。開業支援・繁盛支援から物件のご紹介までワンストップで対応。
監修:有限会社キック 代表取締役 小野田 聡
会社情報
- 会社名:有限会社キック
- 所在地:〒457-0011 愛知県名古屋市南区呼続元町10-65 YMプレイス2F
- 電話:052-825-0869(受付 平日9:00〜18:00)
- 対応エリア:愛知・岐阜・三重・静岡を中心に対応(全国での施工実績あり。その他エリアはご相談ください)
- 公式サイト:https://design-kick.com/
- Instagram:@kick_salondesign
参考・出典
- 国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm